樋木舘薫のをかしの話

春の陽気に誘われて、テラスで飲むコーヒー。

本当は少し寒いし、少し気恥ずかしいけれど、勇気を出してみる。

確かにテーブルは冷たいし、風はまだまだ冬を感じさせるが、日差しはすっかり春の香りがするし、花も続々と咲き始めている。

そんなテラス席で飲むコーヒーは抜群に華やかで甘い。

夏の移ああ動中に欠かせないのが、ガツンと苦味の効いたアイスコーヒー。

氷が溶けて薄くなるのを計算して、濃いめに淹れてあるのだ。

まばゆい光に氷が反射してキラキラと光っているさまは、夏の風物詩の一つにしたいほどだ。

うだる暑さも、このアイスコーヒーを楽しむためにあると思えば待ち遠しい。

秋の夕暮れ、喫茶店で飲むコーヒーには、ミルクを少しだけ入れたい。

光沢が出るくらい深く焼いたコーヒー豆から淹れたコーヒーは、ハーブの香りがするくらい苦いから、ミルクを入れてまろやかにする。

それを優しくかき混ぜて(カップの内側にスプーンがあたらないように!)、少しずつ、少しずつ飲むのである。

そんなコーヒーのお供には、やはりスマホではなく読書だろう。

それも出来れば小説の文庫本で。

冬の朝に飲むホットコーヒーがなかったら、ぼくは冬の間中、冬眠してしまうかもしれない。

寒い朝、日もまだ昇らない時間に瞼を半分閉じながら、お湯を沸かし、コーヒーを淹れる。

この時間のコーヒーは、他のどんなものよりも温かくて、優しくて美味しいのだ。

雪の降る朝などは、窓を開けて外を眺めてみるのも良い。もちろん両手をアツアツのマグカップに添えて。

そんな目覚めのコーヒーには、少し酸味が強くて明るいコーヒーを選びたい。

それが1日の始まりにぴったりのコーヒーだ。

おわり